第178回 SOUL SCREAM『THE “DEEP”』

THE DEEP

THE DEEP


私が日本語ラップに興味を持ち始めた頃、ひたすら日本語ラップの曲を集めました。このSOUL SCREAMの『THE DEEP』は、かなり最初の頃に聴いたのですが、当時はあまり好きではありませんでした。むしろ、ハズレだと思っていました。


私もいろんなラップの曲を聴いてきて、ある時、このアルバムを聴きかえしてみたのですが、なんて素晴らしいアルバムなんだろうと思いました。


1996年リリースということで古くさく感じたり、水の音のIntroが始まったりとか、どこか受け付けないところがあったのですが、逆に今聴くと、すごく新鮮です。アルバムが始まる「魂の叫び」から「0番線」にかけて、トラックもいい意味で古びた感じで、どこか幻想的、斜陽的で、私は好きです。


ところが、7曲目の「追われてる featuring ZEEBRA」はちょっと印象が違います(意外に、ZEEBRASOUL SCREAMの共演は少ない)。それまでのトラックと異なって、ちょっと今風であり、さらに印象的なhookが耳に残ります。それぞれ追われてる状況を描いているのですが、SHIKIが最後ダジャレで締めるのは意表を突きます。
ZEEBRAの他に、K-DUB SHINEが参加していたり(「闇ノ我レ」)、RHYMESTERが参加していたり(「BLAND NEW」)と、私にとってはうれしいアルバムです。


SOUL SCREAMは、現在MCのSHIKIはいませんが、このアルバムを聴くと、ものすごくかっこいいです。HAB I SCREAMとE.G.G.MANの間隙をうまく縫って、本格派のラップです。今のSOUL SCREAMも十分成立していますが、SHIKIがいても誰も邪魔になっていないから不思議です。


アルバム最後を締めくくる「君だけの天使」も傑作です。若者に対するメッセージソングですが、曲、つまりアルバムのラストを女性コーラスで締めます。アルバムの最初が水の音で始まり、女性の美しい声で終わるので、一枚のアルバムと見ても、独特な雰囲気をかもし出しています。