第277回 『BLAST presents ZEEBRA:STREET DREAMS』

ZEEBRA―STREET DREAMS (Shinko Music Mook)

ZEEBRA―STREET DREAMS (Shinko Music Mook)


今回は、私が最近たまたま入った書店で見つけたムック本を紹介しましょう。国内外のブラック・ミュージックを紹介する雑誌「blast」が制作した、ZEEBRAをフィーチャーした本です。


タイミングとしては、新しいアルバム『The New Beginning』に合わせて出版されたもので、そのアルバムについて書かれた章もあります。
(注:『The New Beginning』については、私がまだ聴いてないこともあって、また後日紹介すると思います。)
ZEEBRAという知名度の高いアーティストの作品なので、HIPHOPファンに限らず、かなり多くの人が耳にするアルバムだと思いますが、ぜひ併せて、この『ZEEBRA―STREET DREAMS (Shinko Music Mook)』も読んでください。
それから、日本語ラップをこれから聴こうとしている人や、将来HIPHOPをやりたいという人も読んでほしい本です。


この本は、ZEEBRAの誕生から『The New Beginning』まで書かれています。作品はもちろん聴いたことがありますが、リアルタイムに聴いていたわけではないので、その頃の情報を知ることができて、たいへん楽しく読めました。
なんだかんだ言って、ZEEBRAはやっぱりすごい人です。ただ、家庭環境がもともと裕福な環境にあった人なので、ちょっと違和感を覚えるところもあります。しかし、そのように見られることは、ZEEBRA自身も苦しんできた(いる)ところでしょう。


この本には、ZEEBRAについてのことはほとんど書いてあると言ってもいいでしょう。当たり前ですが、最初から最後までZEEBRA一色です。
UBGについても書いてあるのですが、こんなに所属している人がいるとは知りませんでした。
MCはZEEBRAUZI、T.A.K The Rhhhyme、Akeem、OJ & ST、KM-MARKIT(ただ、過去に在籍していた人も書いているようです)はわかりますが、NAOもUBGだ(った)とは知りませんでした(参照:T.A.K The Rhymehead『THE WORDS』)。それから、最近加入してきた、Braidz(Chino & Sumi)とGotzがUBG Familyと定義されているのが、私はその違いがよくわかりません。
他にも、Connected ArtistにAktionがいたりとよくわかりません(ついでに言うと、OJ & STなのに、なぜかOJ FLOWだけソロで出るのもよくわかりません)。


ZEEBRAの過去の作品をずらっと解説しているのが、助かります。キングギドラ時代の『空からの力』からソロの『TOKYO'S FINEST』まで詳しく解説されている他にも、ZEEBRAのゲスト作品もほぼ全部掲載されています。まだ私の持っていない作品もありますので、購買欲をかきたてられました。


面白かったのは『Blast』前身の『FRONT』時代に、ZEEBRAが書いたコラムが何編か再掲載されている章です。1996年ごろに書かれたものですが、文章からでもZEEBRAの若さが伝わってきます。おそらく、ZEEBRAも今読んだら結構恥ずかしがるかもしれません。
このコラムが面白いのが、当時の様子をリアルタイムで感じることができるところです。今ではクラシックと呼ばれる作品の制作過程を知ることができます。
例えば、SOUL SCREAMTHE DEEP』(アルバムタイトルさえ記事発表後に決定されたらしい)、V.A『NEXT LEVEL(1)』、ラッパ我リヤヤバスギルスキル PARTII?オリジナル・ミックス』、DJ HASEBE『アイスピック feat.ZEEBRA & MUMMY-D』、RHYMESTER「耳ヲ貸スベキ」…。
印象的なのは、96年には、すでに妄走族の般若と出会っていること。しかし、般若といっても、この頃はグループ名が「般若」の時。現・般若は、かつてはヨシを名乗っていましたが、当時からZEEBRAはヨシを高く買っていることがわかります。


また、おそらく、ライブ活動も現在より活発に行っていたようで(文章からアングラ臭がプンプンします)、でまかせクルーと呼ばれるメンバーで成田でライブをやったりといった内容が、まるで普通のことのように書いてあります。でまかせクルーとは、RHYMESTERの「口から出まかせ」に参加したメンバーのことを指しているようで、つまり、キングギドラSOUL SCREAMRHYMESTERのことです。今考えれば、このメンバーが集まるライブが年に何度あるかを考えると、すごい時代です(ちなみに、曲はRHYMESTEREGOTOPIA』に収録)。


音楽雑誌が監修したものなので、やはり、個人的には、独特な文章表現に抵抗を感じます。横文字が多すぎて、結局、何が言いたいのか(言ってるのか)わかりにくいところもあります。中には、なぜ書く必要があるのかよくわからない表現やページもあるのですが、ZEEBRAというか、中心的人物ZEEBRAを通した、当時の日本でのHIPHOPの状況を知ることができる有意義なムック本です。
写真も満載ですし、なにしろZEEBRAについて書かれたものですから、これから日本のHIPHOPを知りたい人にぜひ読んで欲しい本です。


blast presentsシリーズで、一人のアーティスト(グループ)を特集したムック本は、ZEEBRAが最初のようですが、このシリーズは他のアーティストの続編も読みたいです。次回は、MUROでしょうか。