第303回 ZEEBRA『The New Beginning』

The New Beginning

The New Beginning


ZEEBRAの4枚目のアルバムですが、これまでのZEEBRAの集大成といったアルバムです。私も久々にヘビロテするアルバムに出会いました。「ZEEBRA」という名前が肥大化している風潮もありますが、このアルバムを聴いたら、やっぱり「すごい!」「なんだかんだ言っても、できる人なんだ!」と思います。私もいろんな表現を探しているのですが、出てくるのは「やっぱりすごい」という言葉に尽きます。こんなアルバム、今のところZEEBRAにしか出来ません。
海外からも含め、多彩なプロデューサーを呼んでいて、飽きさせることないのですが、そもそも、これだけ呼んでも、ちゃんと咀嚼してZEEBRA色にすること自体がなかなかできる業ではありません。
このアルバムから日本のHIPHOPを聴き始めるというのも悪くありません。聴きやすいアルバムです。海外のHIPHOP作品にちなんだフレーズも随所に出てくるので、普段海外のアーティストしか聴かない人もニヤリとする場面も多いでしょう。


それでは、久々に一曲ずつ感想を書いていくことにします。忘れずに書いておきますが、私の感想より、以前に(id:dmworldhh:20060320)紹介したムック本『ZEEBRA―STREET DREAMS (Shinko Music Mook)』を読むことをオススメします。


1、The New Beginning (intro)
2、Street Dreams
Street Dreams」はすでにシングルとしてリリースされていますが、何度聴いても傑作ですね。これはクラシックでしょう。introも含め、同時代を生きてきた(戦ってきた)HIPHOPアーティストが出てきます。ZEEBRAソロの曲ですが、これまでHIPHOPの道を歩んできたアーティストの気持ちを代表して曲にしましたね。今年のB-BOY PARKのテーマソングとしてもふさわしいと思います。
3、The Three 16's (The Return) feat. TWIGY & D.L
先ほどの「Street Dreams」にも登場するTWIGYとD.L(DEV LARGEのことですよ)が続けて登場します。「Player's Delight」のメンバーですね(参考:『MR. Dynamite』など)。
この曲のZEEBRAがハジけていて、最近の作品では見られなくなったガナり声です。3曲目から気合が入りまくりで、声が割れているくらいです。一転、TWIGYは落ち着いたフロウですが、D.Lもやっぱり巧いですねえ。かっこいいですねえ。B.Lのトラックも最高です。アルバムの中でも聴きどころの曲なのですが、他の曲も良く、3曲目に持ってきたため、どこか印象に残りにくいところもあります。でも、聴く価値は大いにあります。
4、Story Of A Sucka MC
海外のプロデューサー、まずはFocisの作品です(ただし、Focisは日本在住の黒人のようです)。「Nujack」という架空のSucka MCの物語です。フィクションなのですが、実際にいかにもありそうな展開です。かつてKjを名指しでdisるなどしたZEEBRAの創作なので、滑稽な作品ではあるのですが、リアルすぎて、あまり笑ってもいられない部分もあります。Focisの浮ついた感じのトラックもぴったりです。
5、Escape feat. Full Of Harmony
ここからは、女性とのChillな感じの曲が続きます。この曲はJay-Zも手がけた大物プロデューサーJaz-Oのプロデュースです。ZEEBRAの人脈の幅広さは窺えるのですが、このトラックがどうも日本語と合わない気がします。Full Of Harmonyのhookもあって、聴きやすい作品ではあるので、「Oh Yeah」なんかより、この曲でシングルを切った方が良かったと思います。
6、Taste Of Honey feat. CO-KEY & KM-MARKIT
今度は日本サイドのD-Originuプロデュースによるエロ満載のラブソングです。トラックとしては、こちらの方が良いです。当然、トラックに合わせてZEEBRAもフロウを変えてきますが、ゲストにCO-KEY(久しぶり!)とKM-MARKITをよくぞ起用したな、と思います。二人のささやくようなフロウは相性抜群です。
7、Oh Yeah
フロア向けの曲ですが、これだけの曲が並ぶと、少し面白みに欠けます。
8、Let's Get It Started feat. Swizz Beatz
海外から有名なSwizz Beatzをプロデューサーに迎えた作品です。今度はJaz-Oとは違って、いかにも”洋楽”な感じトラックにうまくZEEBRAがハマった作品です。きっとZEEBRAが海外のラッパーだったら、こんな曲でUSのシーンを動かすのだろうなと感じます。Swizz Beatzはラップのヴァースもありますが、冒頭の「Let's Get Started It」とタイトルを連呼する声が、どこか楽しそうに聴こえます。
9、Wildin' Part II feat. Q & AKTION
Street Dreams』に収録されているものに、Q(ラッパ我リヤ)とAKTIONを加えた作品です。タイトル通り、ワイルドなZEEBRAが再び登場しますが、このZEEBRAセルフプロデュースのトラックはQが映えます。Qが突き抜けています。Qの良さが出ています。Qのベスト盤を編集するなら、私は間違いなく、この曲を入れます。さすがのAKTIONも今回のQには負けます(今回のAKTIONはちょっと秋田犬どぶ六っぽいです)。
10、Beat Boxing feat. Braidz
ZEEBRAアルバム恒例となった(?)、UBG若手フリースタイル&ヒューマンビートボックスSkitです。かつて、KM-MARKITもここから始まったんですよね(参考:『BASED ON A TRUE STORY』)。あの時と、ほとんど同じです。
11、The Motto feat. OJ FLOW & UZI
海外プロデューサーScott Storchの作品なのですが、この曲もパッとしません。「Beat Boxing」からの流れで、UBGからOJ FLOWとUZIが登場ですが、どうも盛り上がりに欠けます。「UBGを引き連れたZEEBRA」の曲のような構成となっていて面白いのですが、結果、OJ FLOWとUZIはあまり登場せず、もうちょっとUZIのラップが聴きたかったなと思います。UZIの豪快なフロウも、このトラックだとあまり活かされていません。
それにしても「STどこだ?」(『BASED ON A TRUE STORY』「罠」参照)
12、Slow Down (Album Mix feat. NaNa)
シングルの「Slow Down」(『Oh Yeah』収録)も、ZEEBRAの半生が描かれている作品ですが、hookにNaNaを迎えたAlbum Mixも良いです。
13、Beat Boxing feat. Hibikilla
まさに道場破りのように、レゲエDeeJayのHibikillaがフリースタイルをしにやってきます。冒頭、寸劇が始まりますが、役者の経験があるZEEBRAの演技もなかなか板についています。
いまひとつ、ここでHibikillaが登場する意図がよくわかりませんが、これは将来的にUBGに入ることを示唆しているものなのでしょうか。今までUBGにはレゲエアーティストはいないので、これはこれで面白いことですが。
14、Save The World
なんと、あのT.A.K THE RHHHYMEが戻ってきてくれました。UBGとはけんか別れなのかと思っていましたが、このコラボレーションはこれからもあるといいですね。残念なのは、T.A.K THE RHHHYMEはプロデュースに徹し、ラップ参加がないことです。今後のコラボも期待します。ちなみに、いかにもT.A.K THE RHHHYME好みな曲からサンプリングが使用されています。
15、Do What U Gotta Do feat. AI, 安室奈美恵 & Mummy-D
この曲を初めて聴いたとき「やられた」と思いました。売れる(しかも良い)曲だな、と確信犯でわかっていても、この曲は傑作です。この4人が集まったら、いい曲ができるに決まっています。やはり、Mummy-Dが良いですね。ZEEBRAとの黄金タッグもすっかりお馴染みになりました。Mummy-DZEEBRAのラップヴァースがだんだん速くなっていくのですが、しっかりトラックに乗っていくのが実は巧いと言えるゆえんで、この曲をカラオケで歌い気持ちはわかりますが、素人には難しいと思います(呼吸困難になります)。
この4人のグループで今後も活動していくと聞きましたが、オーバー、アンダー関係なく受け入れられて、国内のR&BとHIPHOPシーンをかき混ぜていくのでしょうね。


ZEEBRAも4枚アルバムを出したので、そろそろ『THE RHYME ANIMAL REMIX E.P.1』みたいなRemix盤も欲しいですね。