第633回  DJ HIROnyc「I don’t know feat. Adya, 宇多丸」

HARLEM ver.3.0

HARLEM ver.3.0


結論として、RHYMESTERのメンバーは器用な人が多いんだなと、この曲を聴いて思いました。
特に、Mummy-Dはトラックメイキングもこなして、HIPHOPの中での役割はもちろん、マボロシの活動などを見ると、ほんとにいろんなことできる人だなと思います。


宇多丸師匠は、ラップ一筋というイメージが個人的にありますが、文筆業での活動も有名ですし、DJとしても活動しています。日本のHIPHOPアーティストの中で、説得力ある発言ができる人ナンバーワンでしょう。


硬派なイメージも個人的に思いますが、ラテン調のDJ HIROnycのノリ重視のトラックもちゃんと消化して、ラップを乗せているのはすごいです。こういうこともできるのか!と初めて聴いた時は、失礼ながら舌を巻いたものです。
今度、RHYMESTERのソロ作品フィーチャリング集なんて出たら、私はこの「I don't know」は入れます。


宇多丸師匠の話ばかりしてしまいましたが、このAdyaというシンガーも注目株でしょう。このAdyaの歌声もトラックにぴったりで、私の中で、さらにこの曲の評価を高めています。


しかし、こんな曲でもチクリとした表現を入れていて、かの有名政治家(名前は曲で確認してね)の下半身スキャンダルのことなどすっかり忘れていました。もう3年経つと、みんな忘れているものです。

第632回 HIBIKILLA「Will」

NO PROBLEM

NO PROBLEM


今回はレゲエの作品を紹介しましょう。


HIBIKILLAの作品はかつて紹介したことがあります。アルバム『NO PROBLEM』では、結構激しいことを言っている曲もありますが、冒頭の「Will」は、ストレートなメッセージがこめられた曲です。
まあ、言ってしまえば「売れ線」の、シングルで出せば売れてもおかしくないような曲です。


全然、何でもないような時に、この曲のhookだけが頭の中に流れてきました。
レゲエなんだけど、誰の声だろう?あれ?聴いたことあるけど、何の曲だったっけかなあ?
そんなことが2、3日続いたので、さすがに気持ちも悪いので、思い当たるところを調べてみました。
そして、謎が解けました。


私はどういうわけか、よくわからないタイミングで、なぜその選曲なのかわからないけど、頭の中に突然曲がかかります。
私の脳はいったいどうなっているのでしょう。
このブログの結構な数の作品は、そんなひらめきがきっかけです。


わかりやすさでいえば、HIPHOPよりレゲエの方が上。ノッたもん勝ちの要素が大きいですよね。
そのあたりが、HIPHOPよりレゲエの方が受け入れられている=売れているポイントなのでしょうねえ。


あと、歌詞もわかりやすいですね。この「Will」も熱いメッセージがこめられていて、最近元気が足りない人たちにオススメです。ぜひ聴いてみてください。
やればできる。

第631回  DJ KRUSH「Tragicomic feat. ACO, TWIGY」

Tragicomic

Tragicomic


世界的にも有名な日本人DJのDJ KRUSH
いわゆるHIPHOPに限らず、幅広く音楽を取り入れています。
そんなDJ KRUSHが、いわゆる日本のHIPHOPに歩み寄った、数少ない曲の一曲です。
ゲストに起用したのは、女性ボーカルのACOTWIGYでした。


トラックもいわゆるHIPHOPですし、言ってしまえば、少々J-POPを意識したところもあるでしょう。
DJ KRUSHの作品の中でも異色でしょうし、わかりやすいトラックです。
まさしく「闇」や「暗黒」を表現しつつも、どこか光が差しているような、まさに「Tragicomic」といった印象を受けました。
ACOのボーカルも合っていますし、TWIGYのアヤしいフロウもこの曲にぴったりです。

第630回  AI『最終宣告』

最終宣告

最終宣告


今回紹介するのは、AIのシングル『最終宣告』です。
今は懐かしいDEF JAM JAPANに所属していた頃、しかも、所属してのデビューシングルです。
それまでの活動とはうってかわって、かなり本格的なR&Bに仕上がっています。
本家のDEF JAMが日本に乗り込んできたわけで、しかも、初の女性アーティスト。そりゃあ、力も入りますし、入っています。


今の大躍進があるの知っているからかもしれませんが、デビューシングルとはいえ、この完成度の高さは何なのでしょうか。驚きです。ものすごい説得力があります。
後の大ヒットになる「Story」「Believe」に比べると、R&B色が濃すぎるということもあるかと思いますが、もっと評価されてもいいと思います。
圧巻なのは、「最終宣告」を英語詞で歌いなおした「LAST WORDS feat. JOE BUDDEN」です。当然のことながら、AIは英語が堪能ですからね。ふつうにアメリカのレコードショップで売られているような作品です。


女性の方から別れを告げる=最終宣告というわけですが、四字熟語という固いイメージをどうしても抱いてしまいます。しかも、デビューシングルです。ここは「LAST WORDS」というタイトルで売り出していたら、少しは売り上げが変わっていたかもなあと想像してしまいます。


割とシンプルなトラックなので、AIの歌唱力がフルに伝わってきます。これは、歌に説得力がなければ作品が成立しない曲ですね。

第629回  Shing02「イカルス」

緑黄色人種

緑黄色人種


前回(id:dmworldhh:20070307)のつづきです。


そうでした。忘れないうちに書いておきましょう。
なんとこのアルバム、1999年に発表されたものなのです。何ということでしょう。
他の日本人アーティストが1999年にやっていたことを考えると(否定するわけでは決してない)、いかに先に行っていたかわかります。つい最近の作品なのかと思っていたら、もう8年も前のことです。


さて、今回の「イカルス」は、前回の「星の王子様」よりも難しくなります。
もちろん話の内容はわかりますが、果たしてこれが何を表しているかを説明するには、中学生には難しいです。
それくらい、難解な話です。おそらく、この作品で大学のレポートは書けるでしょう。
芥川龍之介の「蜘蛛の糸 (ポプラ社文庫―日本の名作文庫)」を彷彿とさせる件が出てきたり、神が出てきたり、般若心経の一節が出てきたり、そもそも主人公の名前が「イカルス」だったり、いろんな宗教が入っています。


この曲は、結構長いお話なのですが、時間は意外と短く6分40分くらいです。
あ、長いか。
「星の王子様」よりは短いですね。でも、それだけ長さを感じさせないストーリーです。


「星の王子様」の宇宙の広大さを感じさせる優しいトラックも好きですが、この「イカルス」の危機感のあるトラックの方が好きですね。
細かいことを言うと、個人的には、スクラッチで「イカイカイカルスは〜」と入る部分はなんか笑えて、ちょっと好きです。


アルバムは、「星の王子様」や「イカルス」などの童話や寓話のような曲ばかりではありません。いわゆる社会批判の曲もあり、そこにもShing02ならではの表現も見られるのですが、そういう批判は、別にShing02が率先してやらなくてもいいのではないか、と個人的には思ってます。それは他の社会派アーティストがやればいいことで、Shing02には、こういう文学的作品や、誰もがその味わいに唸るようなクォリティの高い曲(音と言っていいでしょう)をもっと作ってほしいなと思います。


Shing02の作品にようやく出会えてよかったです。これもBIG Zのおかげ。ありがとう!

第628回  Shing02「星の王子様」

緑黄色人種

緑黄色人種


今回は、たくさん書きたいことがあって、まだ頭が整理できてない状況ですが、頑張って書こうと思います。


そもそもの話から。
Shing02は、このブログに一回も登場しないのはそれもそのはず、私が聴かず嫌いだったためです。
いろんな感想を見たり聞いていると、これは高尚すぎて私には合わないのでないかと。
Shing02は究極のHIPHOPだが、果たして究極にたどり着いていいものかと。
一度、『「歪曲」新来』を聴いたのですが、やっぱり「Shing02はよくわからん」という感想で、それ以来、彼の作品に出会うことはありませんでした。
Shing02がごく限られた人間としか客演しないというのも、客演作品好きな私には、なかなか出会うきっかけもありませんでした。


そして、最近になって、びっくりしました。
あのShing02がなんと、BIG Zと曲を作るとは。
Ita-choのアルバム『It’s My Thing(Eat Meat To The Beat Productions)』中の曲「Survival Mode」で、なんとBIG ZとShing02がフィーチャリングされているのです。
この話は誰もが驚いたはずです。「なぜ、BIG Z?」と思った人は私だけではあるまい。
これはいいきっかけだと思い、ちょうど『緑黄色人種』に出会ったこともあって、聴いてみました。
再び挑戦です。


まず、トラックでいうと、普通でした。あれ、普通のHIPHOPだな。
なんかもっとワケのわからん、リピートしてヘッドホンで聴き続けたら、頭がどうにかなっちゃうトラックじゃなかったのです。あれ、こんな音楽だったっけ。
リリックも普通。確かに、文学的な感覚はにおわせるけど、別に普通だよなあ。
まあ、「普通」と書いたのは否定的な意味では全くなく、構えて聴いていた私は今まで何だったのかと、少し拍子抜けしたわけです。


しかし、10分以上にわたる超大作「星の王子様」にやられました。
やっぱり、このShing02すごいです。もうねえ、すごいです。すごい人です。


私には、これをHIPHOPと呼んでいいのかわかりません。もちろん、トラックから言うとHIPHOPです。ただ、リリックはもう立派な文学作品です。小学校ではなく、中学校や高校の国語に乗るような童話です。
意味難解ではありませんし、ストーリーもわかりやすいですが、ところどころの表現は考えさせられるようなものもあります。
これだけ完成された話なので、「あれ?サン=テグジュペリの『星の王子さま』の話か?」と思いましたが、タイトルがタイトルだけにインスピレーションされたものかも知れませんが、話の内容は違います。


月や火星などにいって、王子様がいろいろなものに出会うわけですが、巡る星とその順番にニヤリとしました。なるほど、芸が細かいですね。特に押韻にこだわっているわけでもないので(もちろん、ラップなので多少韻を意識した箇所はあります)、童話の朗読にも聞こえます。
それにしても、一人で10分以上語るのに飽きを感じさせない力もすごいですね。


もう一つ、紹介したい曲があるのですが、それは次回に。

第627回  B-NINJAH「Ooh... feat. Kalassy Nikoff」

SOUND TRACK 4 LIFE~人生音楽~

SOUND TRACK 4 LIFE~人生音楽~

網走の原野で大麻刈り取り レゲエ歌手ら逮捕

名古屋を拠点に活動するレゲエ歌手「B−NINJAH」こと中村有佑容疑者(27)=愛知県春日井市篠木町=ら2人が大麻を所持していたとして、県警薬物銃器対策課などは、大麻取締法違反(共同所持)の現行犯で逮捕するとともに、同容疑(譲り受け)で友人3人を逮捕した。
中村容疑者は「良い音楽を作るために夜中に大麻で気分をハイにして、眠くなると覚醒(かくせい)剤を打った」と供述。北海道・網走の原野に自生している大麻草を自ら刈り取り、乾燥させ中学時代の同級生に売るなどしていたという。
調べでは、中村容疑者は昨年11月29日、春日井市の自宅で同級生の男(27)とともに大麻草約250グラムを所持していたところを現行犯逮捕され、その後、覚せい剤取締法違反(使用)容疑で再逮捕された。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070306-00000011-san-soci

ショックなニュースをネットで見つけました。
かつてAK-69とコンビを組んでいた、レゲエDeeJayです。


レゲエは、確かに大麻と関連のある音楽です(HIPHOPも確かに、ドラッグのイメージは強いですが…)。
しかし、ダメなものはダメですからね。
法律でダメだと言われる以前の問題でしょう。日本のレゲエ界にも、そういう人が本当にいたのはショックでした。
こういう人がいると、どうしても「他にも使ってる人いるんだろう?」と思ってしまうんですよねえ。
少なくとも、これ以上アーティストの犠牲者は出てほしくないですね。
まだまだ、いい曲が聴きたいと思いますから。


今回は、B-NINJAHソロアルバムに収録されている作品で、盟友Kalassy Nikoff a.k.a. AK-69を迎えた「Ooh...」です。
まさに、大麻ガンジャについて歌っています。
まさか、ほんとに使用していたとは…
これ以上、逮捕者が出ませんように。


※今回の件があったからか、単に昔の作品だからか、売れなかったからかわかりませんが、現在、この作品は入手しにくいようです。