第518回 RHYMESTER「麦の海」

リスペクト

リスペクト


このブログも一年以上更新を続け、回数も500回を超えてきました。
こんな個人で好き勝手に日本語ラップを紹介するブログでも、はてなアンテナに登録してくれている人が20人もいます。
私の友人や知り合いには、このブログのことを秘密にしていますから、少なくとも20人の私の知らない人たちが定期的に読んでくださっているというのは、大変嬉しいことです。
もちろん、それ以外にもリンク元を見れば、はてな以外からも定期的に見てくれる人もいます。
そもそも、間違ってアクセスする人も含め、毎日100人以上の人が読んでくれるわけですから、ほんとに嬉しい。
とまあ、嬉しいんですが、その反面、「そんなに読んでいる人がいるんであれば、ちゃんと書かないとなあ」とか「うわあ、期待されてるんじゃないか」という責任や誤解も少しずつ生じてくるわけで、当初の気楽な気持ちとは違っているのも事実なのです。
でも、安心してください。たぶん、回の数字が増えるだけで、何にも変わらないと思います。期待しても、何にも結果を出しやしませんよ。それどころか、今後は悪化していって、転落していくだけです…


他愛のない冗談はさておき、とあるブログに、このブログのリンクが貼られています。
ありがたいことです。
http://oaive.com/blog/20061116


作者のプロフィールも書いてあり、私とは全く正反対とも言える別世界で働いている方のようですが、「俺より3つも下なの!?」ということがわかり、一瞬、他界しそうになりました。
世の中には、私より年下でも立派な職業についている方がたくさんいるようです。


さて、そのブログの11月16日に、日本語ラップについての記事が書かれています。記事の中身は、全くその通りだと思います。私もこれでも大学出てまして、卒業論文国語学言語学の方面から日本語ラップについて書かせていただきましたから、日本語の特徴として、英語のようなラップはしにくいんですよね。いろいろ説明すると長くなりますし、最近は、日本語ラップに関する論文や見解も多くなってきたようですから、そちらを参考に(数年前に書いた俺はパイオニア?と思ったけど、あの論文の出来は酷すぎて読み返したくない)。


日本語ラップの面白さについてですが、morita氏も書いていますが、言ってみれば言葉遊びなんですよね。そして、突拍子もない言葉がいきなり出てくるけど、全体としてはイイこと言ってたりするんですよね。私もその辺りは面白いと思いますし、このブログを通じて言いたいことの一つでもあります。


morita氏がRhymesterについて書いているので、Rhymesterの名作『リスペクト』(「はてなダイアリーが選ぶ名盤百選」にも選ばれてるんですね)に収録されている「麦の海」を紹介しましょう。
麦の海、つまりビールに関しての曲なのですが、前半のヴァースを担当しているMCの宇多丸は、ビールの歴史について語っています。そこには、「ハムラビ法典」「メソポタミア」「古代エジプト」「ドイツ」などという言葉が出てくるのですが、こんな言葉を使いながら韻を踏んで、説明しているのです。


一転して、後半はMummy-Dがまるで妄想を広げるかのように、ビールについて描写をしています。もちろん、韻を踏みながらですが、「ビール」というお題をどう表現するか、二人の視点の違いも楽しめる作品です。


実は、韻を踏むこと自体は比較的簡単なことですが、作品自体に意味がなければ作品になりませんし(まあ、全く意味不明でも逆に作品になるのですが)、プロの作品として、お金が取れるほどの名文でなくてはいけないのです。不思議なことに、押韻というルールを厳しくしたからこそ産まれる珠玉の表現というのもあります。
以前、このブログでも紹介しましたが(id:dmworldhh:20060527)、同じ『リスペクト』に収録されている「リスペクト featuring RAPPAGARIYA」中の「イタメシのパスタにタラコを足したタラコスパゲティが定番となった」辺りの表現は(正確な歌詞は、曲を聴いて確かめてね)全日本語ラップの作品でも、秀逸な表現だと思います。