第503回  DJ CELORY a.k.a. Mr.BEATS『BEATS JAPAN』

BEATS JAPAN(CCCD)

BEATS JAPAN(CCCD)


このブログもこれだけたくさんの曲を書いていると、ぶっちゃけカブりそうなことがあります。もちろん、カブったらボツになりますが、先にアルバムの中の一曲を紹介して、その後に「やっぱりアルバム一枚まるごと紹介しちゃおう」というケースがあります。
そして、これだけ回を重ねていくと、怖ろしいことも起きます。
「この曲、前に紹介したのに、ブログにページがない!」ことです。


以前に、ブログで「愛だらけ feat.MUMMY-D,HAB I SCREAM,Keyco」を紹介したような記憶があるのですが(モニター画面にページが映っている画像が、脳の中に鮮明に残っている)、今、検索をしても、そんなページがないのです。
これは二つの意味で怖いです。間違って消して、その上に更新してしまったのか、私の脳がどうかしてしまったのか。どっちにしても、損した気分なのは間違いありません。
で、せっかくなので、アルバムごと紹介します。


まずは、曲リストをご覧ください。

  1. Kick Off(実況:倉敷保雄 解説:アーセ成瀬)
  2. This Is How We Do feat. DABO, HI-D
  3. 愛だらけ feat. MUMMY-D, HAB I SCREAM, Keyco
  4. Night Cruize feat .Q
  5. お宝Girls feat. 般若
  6. Smokin' Gunn~確固たる証拠~ feat. RY-DOUBLE
  7. Half Time
  8. Play-N-Life feat. UZI, 山田マン, 秋田犬どぶ六
  9. Time Is Money feat. G.K.MARYAN D.O. DELI
  10. Get It On feat. MAGUMA MC's, 4WD, EARLE2S SEAL
  11. BONDS feat. MACCHO, TOKONA-X
  12. 遠くへ行こう feat. TWIGY, E.G.G.MAN
  13. ラストライン feat. AKTION, B-YAS, 秋田犬どぶ六
  14. Time Up

DJの作品なので、曲作りにラッパーがたくさん要るというのは、このブログでも何度も触れてきましたが、何と多彩なメンバーなのでしょうか。私にとってはよだれの出るような作品であり、また、初心者にとっても聴きやすい作品だと思います。
しかも、ゲストの起用方法が面白く、このそうそうたるメンバーを2つに分けて、まるで紅白戦のように戦わせているというコンセプトです。なんて豪華な試みなのでしょうか。
たぶん、このコンセプトを見て、「自分ならこのメンバーを集めて、チームを振り分けるな」と妄想した人も多いはずでしょう。


アルバムは、サッカー界ではおなじみの倉敷保雄さんの実況から始まります。アーセ成瀬という狙った名前の解説者はもちろん、DJ CELORY a.k.a. Mr.BEATSです。
そして、いきなり、DABOとHI-Dという二大客演王(?)という”鉄板”な曲から幕が開きます。アルバム全体を聴いてもわかりますが、SOUL SCREAMの時のような「どこか情緒ある」トラックではなく、とにかく明るく楽しく聴きやすいトラックです。
そして、以前に紹介したつもりの「愛だらけ」です。トラックも愛が満ちていて、リリックも愛に満ちています。ただ、Mummy-Dの愛は面白いですが、HIPHOPの本質をついた愛ですね。Mummy-Dが言うだけあって、説得力があります。
その後は、一転、ソロ作品が3曲続きます。ラッパ我リヤのQのソロ「Night Cruize」(後にQソロ作品『THE BANGSTA』に収録)はQが無難にまとめましたが、その後の般若の「お宝Girls」は、般若節が炸裂しています。こんなに聴きやすいトラックなのに、あいかわらずぶっちゃけています。それにしても、この豪華メンバーでRY-DOUBLEがソロとはなかなかシブいです。


サッカーの試合通り、Half Timeの後は、キャラが強烈なメンバーが集中します。まず、UZIと山田マンの韻フェチ二人に秋田犬どぶ六の「Play-N-Life」です。文字通り、「遊び」についての曲で、やっぱりUZIはゲームの話をしています。
続いて、G.K.MARYANとD.O.とDELIという濃いメンバーが集まった「Time Is Money」です。「時は金なり」とは言っていますが、どちらかというと時間よりもお金の重要さについて言っています。この人数だからか、不思議とDELIは目立たず、その分G.K.MARYANが立っています。しかも、終盤に社会問題についても少し言及しています。また、G.K.MARYANの低くて変化の少ないフロウの後のD.Oも映えます。
そして、京都や大阪といった関西勢が集まった「Get It On」(それにしても、RYUZOの声好きですねえ)の後の、「BONDS feat.MACCHO&TOKONA-X」がアルバム中の傑作Part 2です。


私が最初にこの曲を聴いたのは、TBSの「ランク王国」でした。すこしPVも流れましたが、なんと、この曲が月間テーマ曲だったのです。いいですか。MACCHOやTOKONA-Xの曲が、あんなおしゃれな女の子向けの番組で流れていたんですよ!
この曲は、やはりMr.BEATSの仕事が秀逸だったのです。MACCHOとTOKONA-Xというクセの強いキャラクターをうまく毒消ししつつも、その旨みは残している絶妙なトラックのおかげです。この二人を起用して、なおかつ魅力を消さずに、しかも、「ランク王国」に認められるような曲を作るというのは至難の業のはずですが、そんな針に糸を通すような仕事をMr.BEATSはやってのけたのです。見事な曲で、やはりTOKONA-Xを語るときに、欠かせない曲に仕上がりました。シングルでも『BONDS feat.MACCHO&TOKONA-X』が出ていますので、ぜひ聴いてください。


BONDS feat.MACCHO&TOKONA-X」の後、流れはエンディングに向かいます。そして、この2曲もおすすめで、傑作Part 3と4です。
「遠くへ行こう」は、SOUL SCREAMの曲のような、どこか哀愁のあるトラックで、旅行の時にぴったりな曲です。やっぱり、遠くへ行きたくなります。また、E.G.G.MANとの連携もさすがです。
最後は、締めにぴったりの「ラストライン feat. AKTION, B-YAS, 秋田犬どぶ六」で、これもまたいいトラックです。すっかりラップが板に付いたAKTIONも、声の勢いを抑えたフロウが曲の雰囲気に合っています。”歌う社長”ことB-YASの「語り」もいいですし、秋田犬どぶ六のボーカルもさすがです。
この「ラストライン」の出来がよっぽど評判が良かったのか、Mr.BEATSが作った日本語ラップMIX『Beats Legend』の最後も「ラストライン」が締めですし、FUTURE SHOCKレーベルの『Shock To The Future~7th Anniversary~』も最後は「ラストライン」です。


2年前の作品ですが、トラックも聴きやすいので、「日本語ラップ初心者」を自負するかたはぜひ聴いてみてください。