第391回 山下達郎「KISSからはじまるミステリー feat. RYO」

SONORITE(通常盤)

SONORITE(通常盤)


日本のHIPHOPアーティストとJ-POPアーティストの共演は今でこそ多くなりましたが、昔は考えられなかったことです。私の中でのいちばんの衝撃作は、Dreams Come TrueZEEBRAの「24/7 -club mix featuring ZEEBRA」(『24 / 7 ― TWENTY FOUR / SEVEN』収録)です。ドリカムがまさかZEEBRAと絡むとは、今でも信じられません。


HIPHOPが邦楽アーティストの領域にどんどん侵出していくのは、楽しみであり、「大丈夫か?」と少し不安でもありますが、ついにあの山下達郎にまでメスが入りました。山下達郎HIPHOPはいちばん遠いところにあるような気もするのですが、まさか共演するとはドリカムに匹敵するくらいの驚きでした。


ケツメイシのRYOがラップで参加していますが、登場時間は比較的少なく、曲としてはやはり「山下達郎の曲」と言っていいでしょう。でも、このくらいの邪魔しない程度がちょうどいいのかも知れません。
しかも、”ケツメイシ”の"RYO"だから山下達郎の声と相性が良いわけで、これが”妄走族”の"565"だとおそらくうまくいかないわけです。もちろん、可能性はないとはいえませんが、実現は相当先の時代になるでしょう(でも、山下達郎と565もちょっと聴いてみたいかも。怖いもの聴きたさで)。


さて、今度はどんな邦楽アーティストがHIPHOPの餌食になるのでしょうか。演歌歌手との本格的コラボレートはまだないようなので、演歌歌手との作品も面白いかもしれませんね。演歌は日本的であるし、何よりも歌はバツグンに上手いですから、こぶしを回しても、あるいはR&B風でも合うと思うのですが、今のところそんな話は出てきませんね。願わくは、あまりイロモノ的な作品になってほしくないですが。


ちなみに、「KISSからはじまるミステリー」は、山下達郎が過去にKinKi Kidsに提供した曲です(『A-album』収録)。それにしても、「ナイフを静かに抜いてくれ」の表現は、ドキリとして、心に残りますね。ふだんラップのリリックばかり見ていますが、ふつうの邦楽曲の詞を見るのも面白いです。
詞もいい作品です。