第381回 EAST END ×YURI『MAICCA』

MAICCA

MAICCA


今回紹介するのは、EAST END×YURIの「MAICCA」です。私世代から上であれば、誰でも知っているEAST ENDだと思いますが、もう10年も前にリリースされた曲で、いわゆる”最近のワカモノ”は知らないかもしれません。
怖ろしいことです。


今や日本におけるHIPHOPは、オーバーグラウンド、アンダーグラウンド、ともによく知られるものとなっていますが、オーバーグラウンドでいち早く知られることになったのは、EAST END(それもEAST END×YURI)とスチャダラパーでしょう。「DA.YO.NE」が有名ですが、この曲で紅白歌合戦に出場したのは、快挙と言って良いでしょう。今は、一曲くらいはラップの曲が入っていますが、10年以上前にラップの曲が紅白にノミネートされるのは信じられないことです。
また、この「DA.YO.NE」が「日本語ラップってこういうものなのか」という意識(同時に偏見も)を世に与えたと言っていいでしょう。


「MAICCA」には、RIP SLYMEPES(当時の表記はPESS)、RYOJI、SU(当時はMellow Downに所属)が参加し、カップリングの「GROOVIN' -remix-」には、RhymesterMellow Yellowが参加しています。「additional rap」という表記ですが、ほとんど誰が誰の声だかわかりません。コーラスと言った方がいいと思います。しかし、これだけのアーティストが集まっているのは、それだけ、EAST END、そしてFunky Grammar Unit(FG)を盛り上げていこうという心意気を感じてしまいます。
また、「DA.YO.NE」の作詞にRhymesterMUMMY-Dが関わっているというのは、日本のHIPHOP業界のトリビアみたいになっていますが、同じFGで、EAST ENDだけポッと火がついたのは、どこか「羨ましい」と思ったところもあったかも知れませんね。


「まいっか」というくだけた言葉を「MAICCA」と書いたセンスや、日常的な会話や出来事を表現したのもウケたポイントでしょう。押韻もしているのですが、あまりこだわらずに、自然な会話調です。ただ、10年前の若者の会話ですから、比較すると若干古い感じは否めませんが(最近の会話で、「カロチン」という言葉は出ないでしょう)。


ただ、せつないのは、私はこのCDを信じられない値段で購入しました。「MAICCA」もカップリングも『Denim-ed Soul 2)』収録されているのですが、あまりにせつなかったので買ってしまいました。年代ものということと、それだけ発売枚数が多いということなのでしょうね。中古CDショップに行けば、EAST END×YURIの作品はだいたい安い価格で置いていますから、この時期のHIPHOPを知らない方はぜひ聴いてみてください。意外に新鮮に聴こえるかもしれません。