第355回 Q『THE BANGSTA』

THE BANGSTA

THE BANGSTA


同じラッパ我リヤの山田マンはソロとして、すでに2枚のミニアルバム『MESSAGE』『RIZE UP』をリリースしましたが、満を持してQがソロアルバムをリリースしました。全20曲、70分を超える大作で、山田マンとの遅れを取り戻したかのような作品です。


山田マンもQもラッパ我リヤではできないようなことをやっていますが、どちらかといえばQの方がラッパ我リヤの作品に近いです。Q自身がプロデュースしている曲も多く、全部で20曲もありますが、実に多彩なことをやっています。
Qのプロデュース作品(つまりは、トラックを制作している)は、Qのフロウのように「太い」ですね。これまで、あまり意識してきませんでしたが、Qのトラックはハマりそうです。
以前、レゲエ作品の『DANCEHALL PREMERE presents REGGAE MILLION』に参加したこともありましたが(「GUERRILLA DANCE〜pump up the volume〜」)、今作にもレゲエに近い(と言っても良い位の)曲があったり、ウェッサイな感じのトラックの「はでに光らしてる車の上」(一瞬、DJ PMXのトラックかと思った)、hookでQが歌っている(!)ラブソングの「LOVIN' YOU」など、Qソロでもバラエティに富んでいるので聴き飽きることはないと思います。
また、山田マンプロデュースの「TOKYO TOKYO」という曲もありますが、敢えて走馬党メンバーの客演を極力外したというところも、私は心意気を感じてしまいます。
アルバムの最後「STILL O.R.E.」は、ベテラン〜中堅アーティストの最近の作品に多く見られる「自己と日本のHIPHOPシーンを振り返る」曲です。Qから見た当時のシーンが描かれていますが、このテの曲には必ずと言っていいほどMicrophone Pagerキングギドラ、雷、RHYMESTERが登場しますね。


私が気になったのは、3曲です。
まず「THE POWER OF DREAMS」です。CRAZY KEN BANDから横山剣をゲストに迎えていますが、これはいいです。日本語ラップ嫌いなCKBファンにもぜひ聴いてほしいです。名パンチライン「俺の話を聞け」よりもさらに強烈なパンチライン「俺の話を倍速で聞け」が登場しています。
2つ目は、「ヤバスギルスキル外伝」です。「ヤバスギルスキル」シリーズもついに外伝が出来てしまいました。トラックから言っても、山田マンのラップを入れたらすぐに「ヤバスギルスキル」になる、むしろ入れて欲しい、我リヤっぽい曲です。最後は、トラックが消えるのですが、しばらくつづくフリースタイルは鳥肌ものです。
3つ目は、「Best Of The World feat. Full Of Harmony」です。ZEEBRAの『The New Beginning』やRHYMESTERの『HEAT ISLAND』といい、最近のF.O.Hの仕事ぶりは大変素晴らしいです。冒頭からヤラれます。この曲だけは、QじゃなくF.O.Hの曲と言ってもいいです。


山田マンやQのソロの作品を聴いていたら、どうしても早くラッパ我リヤの作品を聴きたくなりますね。次は、どんな作品を作ってくるのでしょうか。ヤバスギルスキルは、どんなサプライズゲストが待っているのでしょうか。楽しみです。