第345回 RHYMESTER「リスペクト featuring RAPPAGARIYA」

リスペクト

リスペクト


今回紹介するのは、日本語ラップクラシック中のクラシックの名盤『リスペクト』から、タイトル曲の「リスペクト featuring RAPPAGARIYA」です。
なぜ、今回になって、こんなど真ん中の曲を紹介するのかというと、先日、おいしいタラコスパゲティを食べたからです。


わからない人にはわからないと思いますが、この曲には「タラコスパゲティがどれだけ素晴らしいか」という表現があります。
イタリアの食べ物に日本独自の食材を加えて、新しい料理を作りあげ、しかも、おいしくて、今は定番となっている。
タラコスパゲティのように、我々も「日本語ラップ」というものを作り上げた、というように、宇多丸師匠の思いは読み取れます。


日本の文化を考えてみると、創世記の日本古来から存在するものは少なく、大陸やアメリカ、ヨーロッパの影響を受けた、言ってみればパクったものがたくさんあります。そもそも、漢字がそもそも中国で誕生したものですから、漢字から派生したひらがな、カタカナも純粋に言えば日本のものではありません。
しかし、使いやすいように、ひらがなやカタカナを作った。誕生は日本ではないかもしれないが、それを上手く活用したり改良したりして作った日本ならではのものは多くあります。


日本語ラップもそうです。ラップもHIPHOPも日本発祥のものではありません。しかし、これは面白いということで、先人が日本に取り入れました。当時は、真似事で英語のラップが多かったようですが、「これを日本語でやれないだろうか」という動きが出てきます。しかし、英語と日本語は文法や構造が違うので、そのまま移し替えるのは難しい。そこで、さまざまな試行がなされ、苦心して作っているのが、現在の日本語ラップです。
結果的に、日本語のラップと英語のラップは、言語の違い以上に異なるものとなっていて、アメリカのHIPHOPリスナーには、日本語ラップに抵抗を感じる人もいますが、大事なのは「タラコスパゲティは、なんだかんだ言って美味い」ということです。少なくとも、日本語ラップをおいしいという人が(結構)いる以上、日本語ラップは確立したと言ってもいいでしょう。
先ほど「作っている」と進行形で書きましたが、私はまだ日本語ラップは完成途中だと思っています。今でも、少しづつ変化しています。特に、韻の踏み方が巧くなっている、というか、破格気味だけど韻を踏んでいるようにうまく聞かせるやり方が多く出てきました。


私はラップのことしか書いていませんが、トラックや音楽事情の背景などの要素もあるし、実際はこんな簡単に書けないと思います。
今回伝えたかったのは、日本のHIPHOPは数々の汗と努力の結晶ということです。


リスペクト』は、クラシックと呼ばれる作品の中でも、さらに初心者に聴き易い作品なのでオススメです。併せて、このアルバムのフル・リミックス・アルバム『リスペクト改』も傑作ですから、聴いてみてください。今回の「リスペクト」のRemixはDJ CELORYが手がけていて、Remixもオススメです。