第306回 CRAZY A『PLEASE』

PLEASE

PLEASE


1992年にリリースされたCRAZY-Aのミニ・アルバムです。当時の表記はCRAZY Aでハイフンはないのですね。
今から14年前の作品で、CRAZY Aも相当若いです。しかし、今どき、B-BOYがこんなファッションしていたら、さすがにひくような、ジャケット写真です。
帯には、「1982年ストリートダンサーしていた頃から10年の思いがこめられた」というようなことが書いてありますが、このCDが世に出てから14年も経っていて、さらにその10年も前に活躍していたわけですから、人生B-BOYですね。


14年も前の作品なので、今とギャップがあるのかなと思っていましたが、押韻もしているし、完成された日本語ラップだな、と正直に思いました。ただ、歌詞カードなどCDの作りは古いですね。歴史を感じます。
アルバムには、G.M.KAZやDJ BEATなども参加していて、改めてキャリアの長さを感じさせます。特筆すべきは、3曲目の「WATCH ME!」に、EAST ENDRHYMESTERが参加していることです。


この曲はSCHOOL GANG名義の曲と言っても良いようで、構成メンバーは、GRAND MASTER BACON、CRAZY-A、MC-仁義、EAST ENDRHYMESTER、GANG-Oとなっています。RHYMESTERの『俺に言わせりゃ』は1993年リリースですから、それより以前の曲となります。声とフロウはさすがに変わったかなと思いましたが、聴いてみると、ちゃんと二人だと分かります。さすがに、声は若いですが、GAKU-MCの声が全然変わらないことに驚きました。ちなみに、爆発的ヒット「DA.YO.NE」は1994年ですが、EAST ENDはそれよりも前に活動を開始しています。


もう一つ興味深いのは、アルバムの最後に「WON'T BE LONG」が収録されています。クレジットには「SPECIAL VOCAL : GRANDFATHER KORN」の文字が。「もしや、これがオリジナルか!?」と思いましたが、調べてみると、バブルガム・ブラザーズの「WON’T BE LONG」は1990年リリース。さらに2年前の曲です。


こっちの「WON'T BE LONG」はCRAZY Aバージョンといった感じです。歌ではなく、全てCRAZY Aのラップヴァースです。トラックはほぼ同じですが、例のお馴染みのサビは、歌の部分がないのでちょっと違います。KORNさんは最後にちょっとだけ登場するのですが、そこだけオリジナルと同じ形です。
ちなみに、先ほど挙げたSCHOOL GANGのメンバーなど同士に対するメッセージを歌ったヴァースがあり、EAST ENDはいつも調子のいいことを言い、RHYMESTERは気の良い奴らと言っています。


それにしても、現在のHIPHOPシーンの源であるCRAZY-Aが、バブルガムブラザーズともつながっていたとは知りませんでした。日本のHIPHOPを語る上で、あまり登場しない名前ですが、ブラック・ミュージックを日本に根付かせたアーティストの一つと言ってもいいのでしょう。