第291回 S-WORD「THA Legend and THA Next feat. MURO」

WRAP MUZIK

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HIPHOPに限らず、アーティストは、時にはそれまでのものを覆すほど、音楽性を変えることがあります。
それが成功して有名になる人もいれば、そうでない人もいます。
アーティストであれば、ずっと同じことをやっていて飽きてしまったから、違う方向性に進みたくなることもあると思います。無理矢理、事務所サイドから変えるように強制されることもあるでしょう。CDは売れなきゃやっていけないというダークな面もありますが、逆にアーティストの音楽の幅を広げるというプラスの面もあります。
聴く側にすれば、変わったから聴く人、変わったから聴かない人、変わらずそのアーティストを愛する人に分かれます。


NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDに所属し、その中でも早い段階でソロ・デビューを果たしたS-WORDですが、ソロのアルバム『ONE PIECE』、そのRemixアルバム『FORTUNE』を出した以降は、がらりとスタイルを変えました。
それにより、リスナーが賛否両論、分かれました。


S-WORDも意図して変えてきたと思います。Def Jam Japan側から半ば強制的に圧力が加わったのか、自らやったことなのかはわかりません。迷っていたのかもしれません。
しかし、スタイルは変わったようで、中にはあまり前と変わっていない作品もあります。今回紹介する「THA Legend and THA Next feat. MURO」も、その一つです。
勝手な予測ですが、この曲でK.O.D.P.の総帥MUROから、何か学んだのではないかと思います。タイトルも意味ありげです。
シンプルなトラックで、フリースタイルにも聴こえますが、S-WORDの曲でも、MUROMUROのラップを披露しています。


私はS-WORDのアルバムで『ONE PIECE』と『STAR ILL WARZ』のどちらが好きかと言えば、やはり前者を挙げます。
しかし、今現在、SUIKENと完成させた『HYBRID LINK』を聴く限り(強いて言えば、このアルバムは『ONE PIECE』に近いか)、やはり、どのアルバムもS-WORDだったのだな、と思います。
当時は失敗だったかもしれませんが、あの時にやはりスタイルを変えて良かったと思います。


よく音楽性を変えてきたアーティストの作品をすぐ「失敗作だ」と言ってしまう人がいますが、アーティスト(加えて、音楽事務所、プロデューサーなど)も大人なのですから、ちゃんと思惑があってやることであって、何も考えずにやみくもに曲を作っているわけがありません。