第249回 GANXSTA D.X『旧車會4LIFE』

旧車會 4 Life

旧車會 4 Life


毎年冬に、岩手県小岩井農場で行われている雪祭りに行ってきました。夜に行ったので、ほとんどカップルか若者だったのですが、歩道を渡ろうとした時、私の前をB-BOY系ファッションの男の子二人が乗ってきました。
盛岡市街から結構遠いところにあるのに、わざわざこんなところに…、とも思ったのですが、閉めきった窓から漏れるカーステの音。不思議な音です。車に乗っているのに、カーステから聞こえてくるエンジン音。ただただエンジン音が流れてくる。
あれ?これ、どこかで聴いたことがあるな…


その少年たちが実際に聴いていたかわかりませんが、思い出したのは『旧車會 4 Life』と『旧車會4Life01』です。
曲間のSkitに、さまざまなバイクのエンジン音がそのまま使用されています。その曲名も「CBX-1, 2」や「GT-38-2 & CBX-7, 8」となっていて、わかる人にはわかるタイトルになっています。もちろん、私は詳しくないのでわかりません。
HIPHOPとバイクという不思議な組み合わせのアルバムです。肝心の曲も、夜の道路を疾走するにぴったりなトラックが多いです。


海外では、HIPHOPとギャング(ギャングスタ)と密接な関係があります。ジャンルとして、ギャングスタ・ラップというものあります。
しかし、日本にはギャングというものがありません。そこで、日本にHIPHOPが入ってきたころに、ギャングに当たるものは何かと考えたときに、たどりついた答えの一つが、不良とかチーマーとかヤンキーなど、そんな類いのものだったのです。
童子-Tが所属していたZINGIも、日本の不良を意識したものです。ですので、このバイクにまつわるアルバムも、珍しい作品ですが、それほど不自然な流れで完成したものでもないのです。


しかし、決してアルバム自体は怖くなく、オラオラ感もありません。コントチックでアドリブ感あふれるSkitもあります。
GANXSTA D.Xももうベテランの域で、バイクとHIPHOPをこよなく愛する気持ちが感じられます。昔はどうだったかはわかりませんが、現在は、交通法規を遵守して、バイクをとばしていることでしょう。どこか「いい大人」感がただよいます。


ただ、リリースからだいぶ経つので、車の少年たちは他の作品を聴いていてほしかったです。海外の作品とか、せめて新作をカーステで聴いていてほしかったです。作品自体は私は好きですが、日本語ラップに風あたりが強い昨今、さすがに私もそんな車には抵抗を感じます。