第108回 YAKKO for AQUARIUS『My Hood Iz...』

MY HOOD IZ...

MY HOOD IZ...


JHETT a.k.a YAKKO for AQUARIUS」と書いてあるから、『JHETT』を買って、間違ってこのアルバムも買ってしまった安室奈美恵ファンや 倖田來未ファンは、相当ショックでしょうね。
正真正銘、ど真ん中のHIPHOPアルバムだからです。もちろん、安室奈美恵は参加してません。かなり濃い人たちが集まっています。
(「JHETT」と「YAKKO」で、出すアルバムのレコード会社まで違います)


HIPHOPは「地元」「出身」を大事にする音楽です。「自分は○○出身だ(レペゼン(Represent)という言葉を使う)」とか「○○サイコー」という地元讃歌の曲も多いです。そして、同じ地元同士で仲良く共演する作品も多いです。
今回のYAKKOのアルバムは、地元(Hood)ごとに集めるというコンセプトで、地元の地名やお店の名前が出るなど、それぞれの味が出て大変面白いです。
例えば、YAKKO自身は千葉で活躍しているので千葉勢(DELI、MIKRIS、MARS MANIE)をゲストに招いた「Code Of The 44」など、横浜、大阪、茨城…と地元ごとに曲を作っています。
残念なのは東京(周辺)の曲がちょっと多かったところでしょうか。しかし、東京勢を一曲にまとめてしまうのも無理な気もします。


どの地元も濃いメンバーが集まりましたが、名作なのは名古屋勢の「What's poppin' in my hood?」です。SYGNALとM.O.S.A.D.から"E"qualとAKIRAが参加してますが、まずこのタイトルからヤラれます。
明らかに、このブログでも紹介した(id:dmworldhh:20050701)TOKONA-Xの「Where's my hood at?」を意識しています。
曲の冒頭も「Where's my hood at?」のTOKONA-Xのラップのサンプリングからはじまり、曲中もTOKONA-Xの声が効果的に使われます。普通はトラックの”上に”ラップが乗るというイメージなのですが、TOKONA-Xの声はトラックに”溶け込んでいる”という感じで使われています。
若くして亡くなったTOKONA-Xですが、(俺たちの心の中では)まだ生きているというメッセージまで受け取れます。TOKONA-Xのリリックをそのまま受け継いだ部分もあって、泣かせます。これは感動作です。


個人的に嬉しかったのは、この地元集結のアルバムの最後を北海道勢で飾ったことです。北海道のHIPHOPは、THE BLUE HERBやS.P.C.といった大御所もいるのですが、全国的にはそれほど盛り上がっていません。しかし、『NORTH COAST BAD BOYZ』がリリースされるなど、最近、徐々に火がつきはじめたようです。このアルバムの中でも、HOKT、1-KYU、S55による「Mack Town Life」は、他の曲に負けていないと思います。でも、どうせなら北海道出身のBIG Zは、ここに参加してほしかったです(今回は、渋谷勢で参加)。


これからも北海道は頑張ってほしいですが、このアルバムで登場しなかった地方にも、次回作があるなら出てほしいですね。特に、九州は餓鬼レンジャーなどがいてHIPHOPが盛り上がっていますから、面白いと思います。