第69回 DJ OASIS『ウォーターワールド』

ウォーターワールド

ウォーターワールド


前作『東京砂漠』以来、4年ぶりとなるDJ OASISのアルバムが出ました。結構、前から出る出る、とウワサされてきましたが、ついにやってきました。
私の予想通り、やはり新作タイトルは『ウォーターワールド』となりましたが、実は、このブログのIDもここからもらいました。そのくらい、期待していました。
ですので、ちょっと期待しすぎた感はありましたが(前作が傑作だっただけに)、それでも満足できる内容でした。
せっかくなので、いつもより丁寧に感想を書こうと思います。

1、「ウォーターワールド」
イントロ的な曲。
2、「マイク持つDJ(asin:B000197LHA)」
すでに先行シングルとしてリリースされましたが、アルバムの中でも一つの核になっている曲です。
3、「バラマク feat. 童子-T
カタカナで「バラマク」と書かれていると、DELIかAQUARIUSぽいですが、違います。アトミックボムから童子-Tがまず登場しますが、いわゆるストーリーものです。悪いヤツから金を奪い取り、真面目に生きている人たちに「バラマク」計画について歌っています。
4、「だからどこでも feat.K DUB SHINE, 三善善三, JUN-G」
いわゆる、ニセモノセイバツ的な曲です。三善善三もいますが、意外にも、JUN-Gが素晴らしいです。
5、「超特急 feat. UZI
最初は、この曲のタイトルは「廃人超特急」のような気がしましたが、単に「超特急」となりました。しかし、途中数カ所、歌詞カードに掲載されずに音声処理されているところがあり、いろいろと問題になったのかもしれません。ギャンブルや、スター・ウォーズの話など、面白い部分もあります。
6、「CONTINUE?
この曲だけ、INOVADERプロデュースです。私は知らなかったのですが、DJ OASISがこんなにもテレビゲーム好きだというのは知りませんでした。途中、私も懐かしく感じる部分もありますが、ほんとマニアです。トラックもヘンです。これもアリなんでしょうが、この曲とトンガリキッズの『トンガリキッズ I』と何が違うか、なかなかうまく説明できません。
それにしても、INOVADERのトラックは、こんな感じが多いのでしょうか。キングギドラのRemixアルバム『最新兵器』もINOVADERだけ感じが違いましたが。
7、「世界一おとなしい納税者(カモ)feat. 宇多丸 from RHYMESTERasin:B0002ZF0L2)」
これもすでにシングルでリリースされています。「キ・キ・チ・ガ・イ」シリーズPart 3という感じです。
8、「アトミックボム feat. K DUB SHINE, 童子-T
その名もずばりの曲です。K DUB SHINE押韻が見事です。
9、「ここにあるぜ feat. JA飛龍」
トラックも素晴らしく、JA飛龍がかっこいいです。
10、「まわり罠 feat. BOY-KEN, SHIBA-YANKEE」
このアルバムでは不思議なことに、さきほどのUZIといい、BOY-KENといい、他の曲と比べると、割とインパクトが少ないです。
11、「マジうざくねぇ? feat. ZEEBRA
マジ興味ねえ」の続編ぽいタイトルです。今作はZEEBRAですが。社会問題に対していろいろと問題を提起している作品ですが、この作品こそ、K DUB SHINEにも参加してほしかったです。それでも、キングギドラぽい作品です。すごいと思ったのは、ZEEBRAが、アメリカのHIPHOP業界に物申しているところです。日本人アーティストでは、はじめてと言っていいかも知れないくらい、珍しいというか、誰もやらないことです。
12、「『 』」
DJ OASISが8秒しゃべって終わるのですが、空白の曲です。CDにするのはやはり過激だったらしく、WEB上で配信されました(http://www.atomicbomb.co.jp/)。「大惨事」というタイトルで、ラッパ我リヤのQとの作品です。私はまだbarksのサイト(http://www.barks.jp/)で試聴しかしてないのですが、自爆テロの話らしく、タイムリーすぎて確かにヤバそうです。無料でプロのアーティストの曲を聴ける(期間限定ですが)メリットはありますが、CDはダメだけどWEBならOKという線引きは、どうなんでしょうか。このことについては、この曲をちゃんと聴いてからまた書こうと思います。
13、「何の為」
個人的には好きなトラックです。DJ OASISソロですが、歌詞も含めて、なかなかの名曲です。
14、「これ feat. K DUB SHINE
「これ」とははっきり言って、HIPHOPのことです。二人のHIPHOPに対する愛を込めた一曲です。
15、「どんな価値」
前作『東京砂漠』に収録されていた「途中経過 Remix」の続きのような曲です。前作リリース後から、キングギドラ復活の話、凶気の桜 [DVD]サウンドトラック)の話などが出てきます。「何の為」と併せて聴くと、DJ OASISの伝えたいことが見えてくる気がします。
16、「マイク持つDJ達 feat. DJ JIN from RHYMESTER, DJ KAORI, DJ MASTERKEY
これは、アルバムのコンセプトから言ったら、オマケの一曲と言ってもいいでしょう。ですが、豪華なおまけです。DJ JINの荒削りなラップ、ストレートな気持ちが伝わってきて(思わず笑ってしまうほど)素晴らしいです。DJ OASISも本編と違うラップを入れてきました。DJ KAORIは英語たっぷりのラップで(ちゃんと日本語訳まで書いてある!)なかなか面白いのですが、問題はDJ MASTERKEY。ラップするのかと思いきや、ラップのパートはなく、途中シャウトするのみ。もちろん、♪ランランランラン歌うわけでもありません(参考:『DADDY’S HOUSE VOL.2』「HIP HOP GENTLEMEN 2 feat. MUMMY-D, 山田マン, MINESIN-HOLD」)。トラックもDJ MASTERKEYではありませんから、どうせなら、もっとシャウト部分を増やしてほしかった。もっとDJ MASTERKEYを堪能したかったです。


全体を振り返ってみますと、一応DJなのに、すっかりラッパーになってしまった感じです。しかも、下手なラッパーよりうまいです。ある意味、ちょっと強引な押韻もありますが、それもひとつの工夫(進化)だと思っています。今回はゲストがアトミックボム色がやや強いラインナップになりましたが、これもアリでしょう。
前作とどっちが優れた作品かと言うと、やはりあり得ないほどのゲストの豪華さから『東京砂漠」を挙げちゃいますが、今作もしっかりとしたアルバムだと思います。