第397回 童子-T『WARABEST〜THE BEST OF 童子-T〜』

WARABEST~THE BEST OF 童子-T~

WARABEST~THE BEST OF 童子-T~


中堅〜ベテランアーティストは、新作とともにベスト盤もリリースしてきています。このブログでもベスト盤についての功罪を再三再四書いてきていますが、童子-Tのベスト盤『WARABEST~THE BEST OF 童子-T~』はちょっと変わっています。今までの童子-Tのスタイルからは想像できない試みで、すべてアコースティックヴァージョンでベスト盤が構成されています。
今までこまめに作品を集めてきたリスナーにとっては、ベスト盤はなかなか辛いアイテムなのですが、今回のように曲が刷新されているのも悩ませるところです。


童子-Tの試みについて、賛否両論あるみたいですが、私は今回のアコースティックヴァージョンは結果的に良かったと思っています。
まず、誤解していたのは、童子-Tの作品が、ギターがギンギンうなる、今で言うミクスチャー系になるのかと思っていたのですが、そうではありません。私はあまりミクスチャー系が好きでない(あまりバリバリのロックに興味がない)のですが、『WARABEST~THE BEST OF 童子-T~』は大人も納得できる仕上がりです。歴史的に、HIPHOPは若者の音楽なのですが、少々年配の、それこそ息子がHIPHOPにハマっている世代にも聴いてもらいたいですね。


ただ、おそらく、アコースティックにする際に向き不向きがあったと思います。今作はかっこよくキマりましたが、選曲だけ見れば、童子-Tのベストとはなかなか言いにくいと思います。ほとんどの作品が『少年A』以降のものですが、DOHZI-T & DJ BASS時代の『蜃気楼』からの作品がなぜか一曲だけ入っています(「Di Di Di」)。


これは偶然なのかも知れませんが、童子-Tの代表曲「少年A」がアコースティックにすると、ものすごくハマっています。もしかしたら、オリジナルより良いかも知れません。


まだ試行錯誤は必要だと思いますが、ベテランMCの試みは、また新たなHIPHOPの方向性を垣間見せたような気がします。
(※ベスト盤にはありませんが、ライブで「流儀2003 feat. Mummy-D, ZEEBRA」(『第三の男』収録)のアコースティックバージョンを披露したようです。もしかしたら、今後もこの路線で行くのでしょうか)