第２６３回 DJ HASEBE『OLD NICK RADIO SHOW』

OLD NICK RADIO SHOW

昨今の音楽事情を見ていると、ベストアルバムとは何なのだろう、誰のためにあるのだろうと、つい考えてしまいます。

基本的には、すでにリリースされた曲を再び集めたアルバムです。これから好きになろうというファンの人にとってみれば、うってつけのものです。リリースするアーティストサイドも、そこを狙っているところもあるでしょう。
また、「ベストアルバムまで待とう」とシングルを見逃すファンもいます。
では、これまでCDを手に入れてきた古くからのファンはどうでしょう。「ジャケットがいい」とか「特典がつくから買う」とか「なんでもいいから買う」というファンもいます。「全部、持っているから要らない」というファンもいます。
ですが、ベストアルバムの中には、新曲やRemixが収録されている場合があります。しかも、ほんの数曲。数曲ですが、ファンならば聴かないわけにはいかない。結局、買うことになります。しかし、これは「ベスト」アルバムなのだろうか。

私は、基本的にはレンタルや中古CDで音源を手に入れているので、それほど痛手はありませんが、実際に1000円から3000円のお金を出して、CDを手にしているファンも多いです。そういった真のファンのことを考えると、ベストアルバムの存在はかわいそうです。

このブログでも、少ないですが、国内HIPHOPのベストアルバムを紹介してきました。日本のHIPHOPもそれなりの歴史を刻んできましたから、さまざまなアーティストのベストアルバムがすでにリリースされています。ZEEBRAの『THE FIRST STRUGGLE』、K DUB SHINE『世界遺産』、TWIGY『素の味 1995-2003』、YOU THE ROCK★『I LOVE YOU THE ROCK★-BEST-』、G.K.MARYAN『THE G.K.M』、MURO『BACK II BACK-MURO BEST ALBUM-(CCCD)』『BACK II BACK(2)-MURO BEST ALBUM VOL.2-(CCCD)』、ラッパ我リヤ『BEST OF R.G.』、DJ MASTERKEY『DADDY’S HOUSE BEST』などなど…。良いベストアルバムもありますし、そうでもないものもあります。

ベストアルバムの良いところをあげると、今となっては手に入れにくい音源が収録されていることでしょうか。
それと、数ある曲の中からどの曲が選出されるか、どういう順番に並ぶか、ベストアルバム全体の出来も楽しみです。アーティストにしてみても、ベストアルバムを出すことで区切りがつきますし、一つのステータスとも言えるでしょう。

今までのベストアルバムで良かったものは何だっただろうか、とふと考えてみました。すると、DJ HASEBEの『OLD NICK RADIO SHOW』が思いつきました。
まず、選ばれた曲ですが、さまざまなソースから選ばれています。これはポイントです。そして、MIX形式になっていること。全体がラジオ番組というテーマになっていること。ついでに言うと、次のアルバム『TAIL OF OLD NICK(CCCD)』の序章となっていること。そして、価格も安いということ。
しかし、残念なのは、このアルバムを果たしてベストアルバムと言っていいかということです。厳密に言えば、ベストアルバムとは言えないかもしれません。

結局、ベストアルバムとは何なのか、私はよくわかりません。しかし、今後、ベストアルバムというものが変わるのではないかと思っています。もう始まっていますが、音楽は一曲一曲単位で買う時代になっています。そして、各自で好きな曲を好きなだけ、好きな順番で聴くことができるのです。

これから、音楽はどうなっていくのでしょうか。